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釣り堀のススメ

釣り堀のススメ

釣りと言えば川や海でするものと思い浮かべる人が多いだろう。でも今回行った「市ヶ谷フィッシュセンター」は一味違う。東京の高層ビルや大学のキャンパスが立ち並ぶ、JR市ヶ谷駅すぐ近くに位置しているのだ。大都会の中にひょっこりと釣り堀があるのはなんだか不思議だ。そういえば釣り堀に来るのは初めてかもしれない……

 

釣り堀デビューに
ドキドキ

市ヶ谷駅

実のところ今日僕は彼女(モエコ)のアイデアで釣り堀に行くこととなった。釣りひいては釣り堀自体、幼い頃に1度行ったことがあるかすらあやふやな状態なので、けっこうドキドキしている。隣を歩く彼女も釣り堀は初めてらしく、楽しみだからなのかいつもよりその足取りは軽く感じる。
目的地の「市ヶ谷フィッシュセンター」はネットにも書かれている通りかなりの駅近だ。JR市ヶ谷駅を出て2分もあれば到着できる。こんなにアクセスがいい釣り堀は中々ないだろう。

  • 釣り堀
  • 木や花の中

「モエコ、どうして今日は釣り堀に行きたかったの?」「行ったことなかったから実際の雰囲気を味わってみたかったの。」なるほど。自分としては場所はもとよりどんな人が来ているのかは気になるところではある。イメージとしては場所柄もあって釣り好きなサラリーマンが来るのかなと勝手に予想してみる。外回りの合間にちょっとだけ投げに来るという感じで。

それにしても今年の冬は一段と冷える。木や花の中にはまだまだ咲いているものもあるが、近いうちに枯れてしまうのではと逡巡する。これからしばらくはマフラーと手袋が手放せなくなりそうだ。

 

いざ、釣り堀で
キャスティング!

  • 市ヶ谷フィッシュセンター
  • レンタルの竿と餌



受付で入場料と道具のレンタル代を支払って入場する。「市ヶ谷フィッシュセンター」の入場料金は時間制になっていて1時間なら780円、2時間なら1,530円といった具合だ。今回僕らはお試しなので1時間で入ることにした。レンタルの竿と餌代が合わせて220円なので1時間だとちょうど1,000円になるのも個人的には気持ちがいい。今回はカープフィッシング、つまり鯉を釣るのである。

餌を練って団子状にするわけだが案外難しい。固くなりすぎたり、ボソボソになってしまうのだ。僕が手間取っている間に彼女は器用に餌の団子を量産していく。

  • 釣りをしている感
  • 鳩



餌を付けたら思い切ってキャスティング!遠投するわけではなく、どちらかと言えば狙った場所に落とす方が近いが、一気に「釣りをしている感」が上昇する。気分だけは立派な釣り人だ。黄色のウキが緑がかった水面によく映える。始めてしばらくすると鳩が寄ってきているのに気づいた。周りを見渡しても釣り人の周りには何色かの鳩と雀などがたむろしていて、まるで小さな動物園のようだ。餌が横取りされないか少しヒヤッとする。

釣れない

早速1匹目ゲット!といきたいところだが思ったよりも釣れない。それはモエコも同じみたいで「釣れなさすぎてビックリなんだけど……もっと魚がかかりっぱなしで忙しいと思ったわ。」とこぼす。「でもこの待っている時間もよくない?目の前の物事に集中できるのが僕は好きだな。ウキや釣り糸に意識を向けて、ときたま通る中央線の音をBGMにするみたいな。」と伝えると「確かにここは屋根がなくて開放的だよね。街中みたいに人が多いわけじゃないからリラックスできているかも。」

その後も自ずと会話が増えていった。2人の会話に没頭したのは久しぶりな気がする。これも釣り堀デートの恩恵なのかもしれない。

 

ようやく手応えが……
肝心の結果は?

フィッシング
  • 鯉
  • ネット越しでの生命力



待ち続けるとようやく竿に手応えが!鯉の引きは想像していた数倍は強く、油断したら竿を折られるんじゃないかと思った。鯉がこんなパワフルな魚だなんて知らなかった……恐らくこれが人生初の自力で釣った魚になるだろう。生きている魚のパワーは凄まじく、ネット越しでもその生命力を感じたほどだ。

水しぶきが舞う

安心するのも束の間、今度は僕だけではなく彼女の竿にも食いついた。さっきの鯉よりも暴れるのでそこらじゅうに水しぶきが舞う。彼女が騒ぐ間にすかさずネットで補助をする。割とスマートにネットに入れることができたので、「ちょっと今のかっこよかったかも?」と内心思っていたのは秘密だ。足元を濡らしながらも釣り上げた彼女の顔は屈託のない笑顔だった。それを見てまた近いうちに釣り堀デートに誘おうと思った。

 

新しい憩いの
カタチかもしれない

市ヶ谷フィッシュセンター

初めての釣り堀体験だったわけだけど僕としては思わぬ発見があった。それは「釣り堀はちょうどいい距離感のアクティビティである」ということ。魚を待っている間は眼前のことに集中しながら周りの景色や音を味わうことができる。そして魚が釣れたら、その釣れたという喜びを噛み締められる。

彼女や友人と来たときはカフェほどおしゃべりするわけではなく、本当の釣りのように没頭し過ぎることもない。まさしくちょうどいいアクティビティなのだ。だから誰かとの時間をシェアするのにもぴったり。

今回僕ら以外にも釣り堀で遊んでいる人たちがいた。推察にはなってしまうけど、空きコマ潰しの大学生や予定まで時間を持て余すサラリーマンの方々。そして小さな子どもを連れたお母さん。幅広い年齢や立場の人たちが釣り堀を楽しんでいるのだろう。

彼女にも帰り道に尋ねたら「静かで開放的だったからなのかな、頭がスッキリした気がする。それに2人の時間に没頭できたのも楽しかった。」とのこと。釣り堀はデートのスパイスにも最適なのかもしれない。