STORY

大切な存在と過ごす
かけがえのない「いつも」

大切な存在と過ごす かけがえのない「いつも」

多摩川沿いに住んでもう長いこと経つ。1LDKのマンションの一室を借りて、妻とフレンチブルドッグのULU(ウル)と3人暮らしだ。お世辞にも広いとは言えない空間だが、自分の好きなヒト、モノ、コトに囲まれたこの環境には満足している。

妻とフレンチブルドッグのULU(ウル)

今は様々なクライアントを相手に、OMOコミュニケーション構造の構築やクリエイティブデザイン、マーケティングなど幅広い業務を請け負う会社でアートディレクターとして籍を置いている。
40半ば、まだまだ全力で駆け抜けないといけない年頃である。

 

IN/OUT

ボルダリング

社会に出てからずっと忙しく駆け抜けてきたからなのか、時間の隙間があれば山へ繰り出していた。特にのめり込んだのはクライミングだ。ジムグレードでは3級だが、リードもやるし外岩も攻める。
ブランドルックの撮影でヨセミテへ行き、クライマーと触れ合ったのが最初のきっかけである。「こんなのどうやって登るの?」というほど高くて険しい岩を目の前にして、怯まずにトライしている姿は神々しかった。
とはいえ感動というものは長続きしないもので、日常にすぐ飲み込まれてしまう。帰国してから友人にしつこく誘われたボルダリングも、半ば義務感で付き合っていた程度だ。

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そんなおり「バレーアップライジング」というヨセミテクライマーを題材にしたドキュメンタリー映画を観て衝撃を受けた。当時のアメリカの情勢や、ヒッピー文化などカウンターカルチャー、緊張感MAXの命綱無しで岩登りするフリーソロなど、クレイジーで情熱的な内容に心打たれてしまい、本格的に岩に取り付くようになった。

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最低でも週二回はボルダリングジムへ行き、休みは奥多摩を中心に外岩を回った。
裏原ブーム時代からファッション業界に携わってきたこともあってか、バレーアップライジングで見たクライマーのファッションやカルチャーにかなりの部分共感することができた。
アメリカはいいな。サンフランシスコのバークレーなんて街に行くと、住宅街にいきなり岩場が現れて、地元の人がデニムやディッキーズにバンドTで岩に取り付いている。終わったらスケボーかランニングで家路に着く。

三年半こん詰めてやった結果全く上達しないことへの苛立ちが募っていく。
「何のためにこんなに必死に登っているんだろう」という自問自答が頭から離れなくなったと思ったら、そこからクライミング道具をクローゼットに仕舞うまで早かったと思う。モチベーションの低下といえばそうなのかもしれないが、純粋に楽しむということを忘れてしまったのだろう。

 

趣味が生活の一部に

様々な案件を抱えているのもあり、仕事はおやみなく続いている。ありがたいことだが、心と体のバランスを取らないと忙殺されてしまう。余裕がなくなると仕事だけじゃなく家庭もうまくいかないだろう。

  • 自転車
  • SHIMANO BIKE COMPONENT


クライミングから離れた今は、生活に寄り添った趣味を無理なく続けている。家のすぐ横が多摩川なこともあって、累計月100km以上は川沿いをランニングしている。自然と人工物の融合がほどよく、なんといっても空の抜けが広い。
1年半ほど前に購入したロッキーマウンテンのマウンテンバイクも目下カスタム中だ。まだまだビギナー仕様なので、ドロッパーシートポストやフルサスを追加し、もう少し山で楽しめるようにしたい。
クライミングもランニングも、いわゆるアクティブな趣味は自分と向き合うことができるのが魅力なのかもしれない。思い詰めるとかネガティブなことではなくて、程よい運動は思考をポジティブに変換できる力があるのだと思う。

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生活に欠かせないといえばクルマもそうだ。ワーゲンが好きで、今はGOLF2のマディソンという限定車が愛車だ。ボディーの色味やドアロック機構などが地味にマイナーチェンジされた仕様で、特にシートの柄がお気に入り。
コイツにする前もGOLF2のカブリオレ/左ハンドルだったが、エアコンは効かないし修理も高いしで買い替えてしまった。
自分だけならいいけども、妻やウルのことを考えると少しは同乗者の快適性にも目を向けるようになった。

価値あるもの

趣味だけじゃなくライフスタイルを含めた好きなコトやモノは、誰と共有するかが大切だ。バークレーのクライマーたちがナチュラルに自然を楽しんでいる姿を思い出して、僕もまた岩を前に立つ日が来るかもしれないと考える。
そこに妻やウルや友人がいたら、どんなに幸せなことか。
かけがえのない時間や瞬間というものは、かけがえのない存在と共にしてこそ価値があるのだ。