STORY

キャンプと釣りと
自転車と

キャンプと釣りと自転車と

20代後半にもなれば、周りには所帯を持ったり、海外に飛び出したり、自分で会社を始めたり、それぞれ自分の帰るべき場所や生きるフィールドを築き上げている友人もいる。振り返ってみれば青春を共に謳歌したと言えるであろう親友たちも、各々が信じ道の分かれ道を好きな方向に進んでいる最中なのだろう。忙しくなってしばらくできてなかったけど、今週末は学生時代からの友人と連れ立って外遊びへ。テントとタープを張ってベースキャンプを作ったら、日が暮れるまで好きなことに打ち込む。自分の好きなことだけをする、気ままなキャンプが今のオレたちらしい。

 

それぞれの時間

  • 釣り
  • 釣り


平日よりも早い時間に起きて、車を走らせてやってきたのは林間キャンプ場。ふたりで手早くテントとタープを立てて男の隠れ家を築いたら、あとは各々自由行動に移る。相手に合わせることなく好き勝手できるのも、気のおけない親友だからこそ。

ここでキャンプと決めたのは、お互いやりたいことに打ち込めるフィールドがそこにあったから。陸っぱりから釣りしやすい場所があるし、湖畔に沿って長く続くサイクリングロードも整っている。

単独行動での釣りならいつもやっているけど、なんだかんだ魚を釣った時の嬉しさはSNSでなくリアルで共有できたら嬉しい。まあ、あいつもチャリでどっか行っちゃってるから結局関係ないんだけど…

今日は最近買った竿を実践投入。そういえばバスロッドはたくさん家にあるけど、釣り経験の乏しい友人に貸せるようなビギナー向けのは意外と持ってなかったかも。

トラウトもショアも楽しめる万能タイプだし、いつかあいつが釣りに興味を持ったら貸してやってもいいな。

  • 自転車
  • 自転車


最近独立もして結婚もしたし、いろいろ駆け抜けている最中。充実しているけど自分の時間を蔑ろにしている側面もあったから、今回誘ってくれた友人には感謝している。

広い湖や森の景色に心を動かされたり、自分と向き合えたり、人との出会いがあったり。こうしてチャリで遠出すると、ペダルを漕ぐ爽快感だけじゃない副産物も得られるからイイ。

湖沿いのサイクリングロードを流していると、自分たちのように人生の束の間を謳歌している釣り人やサイクリスト、ジョガーの人たちの姿をよく見かける。自分も含め、みんな仕事や日常生活がありながら、こうして脇道を楽しんでいて最高だな。

そういえば友人が大物を釣るぞと鼻息を荒げてたけど、結局釣れたんだろうか? 小腹も空いてきたしそろそろ戻ってみよう。

 

根拠地としての
キャンプサイト

外遊び

新調したロッドの振り心地は楽しめたものの釣果はさっぱり。大物を釣る宣言もしちゃったし夕まずめまで狙いたいところだけど、オレは引き際がわかる男。外遊びはその行為自体でなく、道具にこだわったり、試行錯誤するというところにも醍醐味がある。

魚を釣らずして釣りを満喫したのだと自分を納得させた後は、美味しいコーヒーを淹れるという遊び。サイクリングから戻ったあいつをコーヒーで持て成してあげよう。

サイクリングから戻った

自転車を押しながらサイトに近づくと、周辺にはコーヒーの良い香りが漂っていた。満足に釣れたから早めに戻ってきたのかな?

「お、コーヒーありがとう。大物は釣れた?」聞いてみると、あいつは含みのある笑顔だけで返答。いや、どっちなんだよ…。こちらも笑いながらコーヒーを受けとる。

まあいい、今日の日中の出来事はもちろん、会ってなかった間に溜まった話題もたくさんある。宴の準備でもしてゆっくり語ればいい。

頑張るオレたちに乾杯

クーラーボックス

コーヒーを飲みながらしつこく釣果を聞かれたが、意気込んでた手前こちらも悔しくてボウズだったとは言えない。そして無駄に話をはぐらかした末、おれが放ったのが「釣った魚がクーラーボックスに入ってるから見てみてよ」という言葉だった。

あいつは訝しげな顔をして座っていたクーラーから腰を上げ、バックルを押してパカリと蓋をオープン…。無言のまま冷やされていたドリンクを取り出し、オレたちは乾杯をした。

キャンプの夜

キャンプの夜は長いのに、不思議と時間はあっという間に過ぎていく。秘密基地でしかできない馬鹿話や、昔からの仲間だからできる真面目な話を行ったり来たり。ふたりの関係は10年前と変わっちゃいないけど、話の中から互いの成長、もしくは加齢を感じる。

人間社会の中での自分のポジションに変化はあっても、自然の中に身を置いたらひとりの人間。改めて、素の自分を気づかせてくれる外遊びや友人を持っているのは幸せなことだとシミジミ思う。

人生はまだまだこれから。一息つくのは早いけど、こうした友との時間や趣味に打ち込む時間も大事にしていきたい。