STORY

アウトドアと人を繋ぐ、
A-suke流人生の楽しみ方

アウトドアと人を繫ぐ、A-suke流人生の楽しみ方

INTERVIEW

BASE CAMP店主 A-sukeさん

アウトドアライフと日常生活をシームレスに行き来する、アウトドアパーソンに話を伺うインタビュー企画。今回は東京・水道橋に店を構えるカフェバー「BASE CAMP」のA-sukeさんに、自身のアウトドア観と人生観について尋ねた。

 

アウトドア好きの
憩いの場を作る

Cafe&Bar

ーまずはBASE CAMPという
お店について教えてください。

店内から神田川も見下ろせるリラックスムードの山小屋風のカフェバーで、自家製の燻製料理やダッジオーブン料理のおつまみ、自慢のカレーやパスタを提供しています。カウンター席では濃ゆいアウトドアズマンが集まってお酒を片手に語り合っていたり、テーブル席ではグループでゆったりくつろげたり。ランチはOLの方も来られますし、みんなが好きなように過ごせるお店づくりを心がけています。

また、アウトドアをコンセプトにしていることで自然好きな人たちが集まるので、新たな一歩を踏み出して欲しいとフライフィッシング初心者の方に向けたワークショップ「毛ばりカフェ」を定期的に店内で開いたり、テントなし、燃料なし、インスタントフードなしのキャンプイベント「男前キャンプ」を主催したりもしています。

  • カフェの中
  • カフェの中


ー店内にはアウトドア関係の
本もたくさんあり、
釣りやキャンプを
テーマにしたアートや、
ハンティングを思わせる
オブジェもありますね。

お茶しながら眺められるように、本や雑誌は自分が気に入ったものや自分が出演したものを中心に置いてます。出版社が集まる神保町も近いこともありメディア関係の常連さんも多く、横の繫がりが広がって面白い企画が生まれたりするんです。壁にはイラストレーターや写真家の知り合いから購入した絵を飾って雰囲気を盛り上げつつ、僕が仕留めた鹿のハンティングトロフィーも飾ったり。だんだんとワイルドになってきました。

カフェの中

ー物販コーナーは
セレクトしたものだけでなく、
オリジナル商品もあるんですね。

はじめのころは知り合いの作家が作った小物を販売するスペースだったのですが、今はお店オリジナルのシェラカップやダイネックスマグ、僕が監修した燻製やBBQ料理の本、僕がプロデュースしたテンマクデザインの製品も一部販売しています。焚き火台にタープ、グリルプレート、ナイフにキャンプスパイス。僕のアイデアをこうして世に出すのは店を始める前からの目標だったので、個人的にも誇らしい空間です。

ナイフ

ーものすごくゴツいナイフも
ありますね!

店をやってメディアとお仕事をさせてもらうようになったお陰で業界とも繫がるようになって、テンマクデザインから「キャンプホリックナイフ」を出せたのは感慨深かったですね。カスタムナイフは趣味で自分で作ったりするんですが、こうして量産ベースのナイフを世に出せたので、1つ僕の夢は達成した感じです(笑)。

昔、母親の知り合いの伝てで雑誌「主婦と友」にナイフ作家になるって内容の僕の作文が載ったんですが、このときから温めていたナイフが実際に具現化しました。

 

自然遊びの原点も水道橋

ベースキャンプ

ーA-sukeさんが
アウトドア好きになった
きっかけを
教えてください。

僕は生まれも育ちもお茶の水。こう見えて都会っ子なんですが、小さいころから昆虫や爬虫類がすごく好きでした。通っていた幼稚園、小学校がお茶の水女子大の付属で、その敷地内には都内なのに野っ原や小山みたいなものもあって、外で自然に触れる時間も多かったんです。また家の近所に東大の本郷キャンパスがあり、母に手を引かれて三四郎池の周りが定番の散歩コースだったので、物心ついたときには動物や自然に興味を持ってたんだと思います。都会にいながらにして、自然で遊ぶのが普通の感覚だったんですね。

もう少し大きくなって、小6か中1のころには友達とバックパックに荷物をつめて、電車でキャンプにいきましたね。ウチの学校では林間学校の行事でもないのに、校庭で焚き火をして料理をして学校に泊まるイベントがあって、そういうのも遊びの1つだと認識していました。周りの友達も別にキャンプ好きとかじゃないのですが、そこまでお金もかからず楽しかったので、子どもたちだけで奥多摩とか河口湖に行ってました。

ーアウトドア遊びは
両親からの影響では
なかったのですね。

ちょうどバブルの時代だったからか父はアウトドアに全然興味がなくて、休みといえば六本木や青山に出かける人でした。しかし、フリーのフォトグラファーだったので仕事だったのかもしれないのですが、あるとき父が知人の誘いでアラスカに旅行に行った際にフライフィッシングにハマったんです。

それから僕らを管理釣り場に連れて行ってくれて、そこで初めて家族でキャンプをするようになりました。そのころには僕はすっかりアウトドア好きを自認していたので、ようやく父が自分のほうに寄ってきてくれたなという感じでしたね(笑)。

 

真のアウトドアズマンに憧れて

キャンプ本

ーアウトドアアクティビティの
興味はどの方向へ?

中学生以降は僕のなかでキャンプを目的にキャンプをすることは少なくなったのですが、10代前半は自分で火を起こしたり、テントを張ったりする行為にワクワクしてました。それに今思えば変わったヤツなのですが、子どもながらにアウトドアナイフにすごく興味を持っていたんです。

ロープと焚火とナイフを操って、知恵でサバイバルできるのが真のアウトドアズマン。僕はそういう男に憧れていたんですが、ロープと焚火はモノというより技術。だけどナイフはモノじゃないですか。子どもだから格好ばっかり真似したくなったんでしょうね、まずはかっこいいナイフが欲しいって思ったんです。

それで、自転車でアメ横にあるナイフ屋さんまで行って、ショーケースに並ぶナイフを眺めるようになりました。当時は高価で決して買えなかったのですが、美しいけど危ない、なんともいえないゾクゾク感に魅了されたんですよね。10代前半からカスタムナイフを作ってる職人さんが集まる即売会に通うようになって、話をしている職人さんと仲良くなって、ついには自分でも作るようになり、将来の夢がナイフ職人になりました。

ー確かに
変わった少年ですね……。

たしか高校生の夏休みには職人さんの家に泊まり込んでナイフ作りを教えてもらったりしてました。結構その夢は本気で、高校卒業後は金工から学ぼうと、一浪して武蔵野美術大学に入学。美術的な勉強をしているうちに、1人のユーザーに喜んでもらうカスタムナイフでなく、実用的で多くの人に使われるプロダクトデザインに魅力を感じ始め、少し心変わりはしたんですけどね(笑)。

カフェの中

ーそれで、
ナイフ職人を
目指していた青年が、
どうして飲食の道へ?

美大学時代は自転車部に入ってMTBでしょっちゅう山に行ったり、課題に追われていたらあっという間に4年が過ぎ去っていき、卒業したあとはプロダクトデザイナーとして働いていました。そのころはそんなに遊び回れるほど時間もお金も余裕がなかったこともあり、その問題をどうにかしようと僕が企画を立てて、サークルじゃないですけど、遊びに行く集まりを主催し始めたんです。

小、中、高、大学。それぞれの友達と遊びたいけど、そんなに遊べない。だったらみんなを繫げて、みんなで遊びに行けたらコスパも良いし楽しいじゃんって考えたんです。そのときは冬のスノーボードがメインのアクティビティでしたが、メンバーを集めて、冬以外の季節は花見やバーベキューも企画して、一回1000円とか少額の会費を集めて料理を用意したりしました。

自転車

そんな活動をしているうちに、自分はこっちの方が好きだし向いているんじゃないと思って、アウトドア好きが集まれる飲食店ができたら良いんじゃないかと考え始めたんです。自分も自然遊びの知識はあるし、遊びにかける時間とかコストが、全部自己投資ってことになって回収できる。それに、巡り巡っていつか自分のナイフをプロデュースできるかもしれないぞ……と。

もちろんデザイナーの仕事は好きだったんですけど、自分と全然違うライフスタイルの人のための道具をデザインしなければいけないことが大半だったので、それなら自分が好きなことだけを突き詰めたいと思ったんです。そしてデザイン事務所を辞めて、フリーターで数年間飲食店をかけ持ちで働き、31歳のときに独立してBASE CAMPを開きました。

 

アウトドアを通して
人と繫がる

料理

ー店を開いてから自身の遊びに
変化はありましたか?

店を始めるために借入れもしてたこともあり、最初はそれまでにやっていた遊びを深掘りする方向でしたけど、1年ほど経って店をやっていける自信がついてからはどんどん新しい遊びに挑戦し始めました。アウトドア好きなお客さんからの刺激もあって、稼いだ分は新しい遊びの投資に。まずは飲食に関連するところを意識して、キノコ狩りや山菜狩りに始まり、子どものころやっていたフライフィッシングやその他の釣りを本格的にやり始め、今では空気銃での鳥猟や散弾銃での四つ脚など、ハンティングもやるようになりました。

カヤックやパックラフトといった水辺の乗り物も始めたことで、自転車や釣り、狩猟と絡めて楽しめるようになって、より遊び方の幅も広くなっている感じがします。

ーアウトドア遊びの
オールラウンダーですね。

アメリカ文化を直輸入していたような90年代のアウトドア雑誌の影響もあり、ひと回り上の先輩たちの影響もあり、カヤックもクライミングも、釣りもスノースポーツも、とにかくありとあらゆるアウトドア遊びをやってこそアウトドア。と思って育ってきたこともありますし、僕も好奇心旺盛なので今のような形になってますね。アウトドア遊びは季節によって向き不向きがあるから、その季節でやっていて気持ち良い遊びをその時々でやってる感じです。

僕がお客さんに教えることもあるけど、お店にくるお客さんから話を聞いてやる気になったりするなんて日常茶飯事。お客さんに教わったり、連れてってもらいながら、自分も成長させてもらっているんです。

A-sukeさん

ーインタビューの最後に、
A-sukeさんの今後の目標を
教えてください。

今までと変わらず、楽しそうなことがあったら挑戦して、良いサイクルが生まれていけば良いなと思っています。お店を始めて今年で12年目になりますが、BASE CAMPという箱があることで僕を知ってくださっていたり、逆に僕がプロデュースした本や商品がきっかけでお店に来店してくれるお客さんがいたり、とても良い感じなんです。

最近は自分が「人と繫がることジャンキー」だと自覚していて、毎日誰かがお店にフラッとやってきて話ができることが嬉しいんですよね。なんだか毎日飲み会に参加している感覚。出会いが新しい世界を見せてくれて、そこから新しい遊びや知識に繫がるのが幸せなんですよ。

BASE CAMP


-Profile-

BASE CAMPのキッチンで腕を振るい、休日はアウトドア遊びに没頭するアウトドアマン。釣りやカヤック、パックラフトなどの水辺の遊びから、自転車にキャンプ、ハンティング、ウィンタースポーツまでさまざまなアクティビティを愛好。アウトドア料理を中心に著書もあり、メディア出演も多数。果てはアウトドアギアのプロデュースも手がけるなど、精力的に活動を続けている。

A-sukeさん