STORY
夏の湖畔で初体験

キャンプに山登り、スキーやカヌー、フライフィッシング、狩猟。アウトドア遊びは好きだけど、全てにおいて浅くしか楽しめていない僕。自分としてはそれで満足しているんだけど、どこか心に引け目を感じているところもある。特にバスフィッシングは奥歯にものが引っかかっているような事柄のひとつで、道具を買ってやってはいたけど、釣れたことがないのだ。今回、西湖で開かれた「BASS FISHING CAMP」に参加したのは、自分のコンプレックスと向きあってみようと思ったから。初心者の妻をダシに、釣りのコツを教えてもらうんだ。
通い慣れたキャンプ場で

突発的にキャンプにいくタイプだから、事前にサイトを予約するっていうのは苦手。だから当日受付のキャンプ場が好きで、西湖の自由キャンプ場には何度か訪れたことがあった。富士五湖なのに富士山が見えないから河口湖とかに比べたら少し穴場感があるけど、こうして改めて見てみると、開放感があってウォーターアクティビティを楽しんでいる人も多い。
猛暑が日本各地を襲っていると天気予報が伝えていたものの、8月頭の西湖は風が心地よく、コンクリートに囲まれた街中と違って風が気持ちいい。日陰にいれば汗をかかないくらいの、完璧な夏の休日だった。

僕と妻は最近結婚式をあげたばかり。式の準備に追われて何ヶ月も外遊びができていなかったけど、今日はリハビリがてら西湖にやってきた。バス釣りとキャンプが一緒に楽しめるイベントが開催されるとインスタで見て、日帰り参加で行ってみたのだ。
彼女......もとい妻は、元々はアウトドア派ではなかった。だけど僕の趣味に振り回されてキャンプをするようになってからは、ハイキングやウィンタースポーツもやるように。今回バス釣りに誘ったのも、2人で新しいことを始められるかもしれないと思ったからだった。

会場に着いたのは、お昼ご飯の吉田うどんを食べ終わったあと。流石に真昼間では魚の活性も悪いだろうと素人ながら思ったので、まずはイベント会場をブラついてみた。バス釣りとキャンプをミックスしたイベントを催すだけあって、最近のシマノは良い意味で色気づいている。街やキャンプでも着れる機能性ウェアもあるし、レディースのフィッシングウェアもあることは新しい発見だった。
参加者の多くがキャンパーだったからか、みんなが見ていたのが新しいクーラーボックス。確かに真夏のキャンプだったら保冷スペックは高ければ高い方が良いだろうし、見た目もクール。デカデカとロゴが入っていないのもありがたい。
釣りとキャンプは
気ままにやるに限る

真夏の週末に釣り体験に行こうと誘ったとき、妻にブーブー言われると思っていたけど、意外と乗り気だったのは嬉しい誤算。しかも釣りだけではない楽しみもあったので、飽きずに半日を過ごすことができたからよかった。
キャンプイベントはこれまでに何回か行ったことがあるけれど、この手のものはスケジュールもゆるっとしてて、参加者に委ねられている部分も多いからありがたい。普段外遊びをするときもそうだけど、やっぱり自然の中では自分のペースで過ごしたいからね。
家族連れや友人、カップルでの参加が多かったこともあり、針金を曲げてブラックバスの形を作るというワークショップは大盛況。僕達もやってみたら結構熱中できたし、完成した針金バスからは、妻の几帳面なようでいて不器用な一面も垣間見えた。針金を曲げるだけでも、けっこう性格が出るもんなんだな。

僕たちが釣りを始めたのは、ちょっと日が傾いてきたころ。イベントではビギナー向けのタックルを無料で貸してくれたので、手ブラでバス釣り体験。僕たちのように右も左もわからない状態でも、スタッフがルアーの投げ方やラインの巻き方まで丁寧に教えてくれる。
写真やコーヒー、狩猟やフライフィッシングなど、僕は興味本位で手をだすものの、結局は中途半端。その理由は、独学で突っ走って、道理を理解せぬまま取り組んでいるからだと自己分析している。だけど今回は道具も場所も揃ってて、何より頼れるスタッフの人がいる。前から思ってた疑問も解消されて、なんだか自分の中の好奇心が膨らんできた。
多分同じ境遇を持つ30代は少なくないと思うんだけど、実は僕も子どもの頃はグランダー武蔵やMr.釣りどれん、釣りキチ三平などの釣り漫画に当てられて、ルアーフィッシングをやっていた。だけど、バスを釣ったことは一度もない。それが今までに続くコンプレックスだったりするのだが、今回は「闇雲にやってたからダメだったんだ」というお墨付きがもらえた気がして、逆に少し晴れやかな気持ちになった。

バス釣り童貞を拗らせている僕だったが、一方の妻はスピニングリール自体が初めて。さっき教えてもらったばかりなのに、ベールアームを上げずにキャストしようとしてルアーが飛ばず、首を傾げている。新婚ながらすでに尻に敷かれている僕が、彼女をリードできるのはこういうときだけ。下手くそなりに、前にルアーを飛ばせるよう手取り足取り指導することになった。
ただ、やり方がわかることと釣れることは別の問題。何度も繰り返すうちに遠投できるようになったけど、流石に1時間投げ続けて釣れないと、魚自体がいないのでは? と、場所のせいにしたくなる。

その気持ちは一緒だったようで「貸ボートがあるなら、それで場所をかえてみない?」と妻。その一言でボートを借りる決心をして、僕たちは西湖の大海原へ漕ぎ出した。西の稜線に夕日がかかって、少しずつ日陰が伸びていくのを見ながら湖面に浮かび、ルアーを投げる。そういえば、2人でボートに乗るのは今回が初めてだったかも。
そのあと、ボートを返却する時間まで粘ったものの、結局最後まで魚の気配を感じることはなかった。だけど今日はバス釣りを通して新しい世界が広がった気がする。これまで釣りってひとりで楽しむものだと思っていたけど、こういうのなら2人でも楽しめるかもしれない。そうだ。妻が釣りづいている今のうちに、近所の釣具屋にでも行ってみよう。バスは釣れないかもしれないけど、妻は釣れるかもしれない......。