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海と人と、サーフボード

海と人と、サーフボード

人生のなかでいろんな分岐点があったけど、サーフィンとの出会いは別格。サーフィンをしていなければ、今こうして南房総に住んでいないだろうし、こんなに多幸感を得られる日々を暮らしていないのではないか。時々そう思うことがある。アウトドア・アクティビティのひとつだけど、サーフィンは生活の一部。とても大切な存在で、僕も家族も、これなしでは生きていけないかもしれない。

 

近所に
サーフポイントがある暮らし

近所にサーフポイントがある暮らし

僕がサーフィンと出会ったのは大学生のとき。埼玉出身で、それまで海とはあんまり縁がなかったんだけど、たまたまバイト先の先輩がサーフィンに連れて行ってくれたのが始まりだった。僕としてはスノーボードが得意だったけど、常に変化する波の上は違っていて、全然乗ることができなくて。それが悔しかったから、それ以降も電車に乗って湘南に通うようになった。

あれから20年以上経って、今ではサーフィンを楽しむために海の近くで暮らしているから、人生何が起こるかわからない。


庭を見下ろせるウッドデッキ

2019年に建てたマイホームは旅先のオーストラリアで出会ったファームハウスを参考にしたもので、庭を見下ろせるウッドデッキは広めに設計してもらった。遠くに海を望むことができるこの場所はサーフボードの特等席。彼らはいつも出番を待っている。

ウチは僕と妻、長男と次男の4人家族でみんな海が好き。最寄りのサーフスポットまではクルマでも自転車でも5分もあれば着くから、各々が好きなタイミングで海へ遊びに行っている。サーフボードが立てかけられているボードラックは、一般的な家庭のメッセージボードのような役割を果たす。家族がそれぞれの予定を把握してなくても、どのボードがないかで、誰が海にいるかがわかるんだ。


なんだかんだ週4日くらいサーフィンしている

僕はフリーの編集・ライターで、妻は自宅の一角で自家酵母を使ったパンを作って販売している。勤め人じゃないぶん好きなようにスケジュールを調整できるから、晴耕雨読よろしく、波がいいときにサーフィンをして、ダメなら仕事に精を出す。といいつつ、ここ一年はサーフィン熱が高くて、なんだかんだ週4日くらいサーフィンしているけど……。


フリーの編集・ライター

今日は12月26日の火曜日。子どもたちは冬休みに突入して、僕たちも仕事がおさまって年末年始ムード。波も悪くなさそうだし、今日は家族4人そろって海にいくことにした。妻はカスタムボートを手に入れてから僕以上にサーフィンに情熱を傾けているし、長男は始めてまだ数年しか経っていないのに、身のこなしが軽やか。僕もその姿に感化されて、年甲斐もなく燃えている。

寒い時期は海に入りたがらない次男にはちょっと悪いけど、こんなに気持ちい天気に家に閉じこもってちゃあもったいない。

 

自然で遊ぶということ

自然で遊ぶということ

Youtubeも好きだけど息子たちはよく外で遊んでいる。サーフィン、スケボー、釣りは僕と一緒に楽しむし、家の裏の水路にザリガニを放したり、庭で土いじりをしたり、兄弟で名もなき遊びをクリエイトしたり。

最近は学校で環境やSDGsの教育が盛んみたいだけど、息子たちみたいに日頃から片田舎でご近所さんや自然と触れあって遊んでいれば、自ずとその感覚が身についていくんじゃないかなとも思っている。


Orient

現に僕たち自身も千葉の海沿いに15年以上住んでいて、自然と暮らしについて考えることは多い。あらゆるものの最終的な終着点である海だから、なるべく汚染しない方法を探ったりするようになった。
小さな変化だけど、最近ではサーフィンに不可欠なワックスにも石油を使ってないもので良いものを友人のサーファーが作りはじめたから、積極的にフィードバックしたり、知り合いにもすすめるようにしている。


千葉の海沿いに15年以上住んでいた
仕事と遊びを両立

アウトドア遊びの素晴らしさについては僕が語るまでもないけれど、それは遊びの枠を超えて人生に大きな影響を与えるもの。僕の妻も、サーフィンに出会ってからの人生はそれ以前とまったく違うというし、今の僕を形作っているのも間違いなくサーフィン。東京を離れ、この場所で仕事と遊びを両立できているから、本当にここにきてよかったと思っている。

 

師走のファミリーセッション

師走のファミリーセッション

テトラポッドなど人工物のないビーチが続く三島海岸周辺は、自宅から最寄りのサーフスポットのひとつ。千葉南部は黒潮の影響により茨城や千葉北部エリアに比べて水温が高いため、冬でも多くのサーファーで賑わっている。

波乗りをしない人からすれば、ビーチなんて遠浅か否かぐらいしか気にしていないかもしれないが、サーファーの目はシビア。場所によって波は異なるし、同じ場所でも時間帯はもちろん、うねりの向きによって波の質はまったく違ってくる。例えば大雨が降ったあとなんかは河口側から海側に砂が流れ出て海底の地形が変わるから、その前後で波の立ち方も大きく変わってくるんだ。

水面の起伏運動

波はただの水面の起伏運動。だけど、それが起こるのには潮の満ち引き、風、水中の地形、うねりの向きや強さ……と、さまざまな自然の因果関係がある。どこで、いつ、どんな波がたつのか、その見極めスキルはサーファーにとって必要不可欠。経験値と観察、そして感がものをいう。

このスキルは結構釣りにも活きていて、なんとなくいると思った場所にルアーを投げて、予想どおりヒラメが釣れたりする時もあるから、バカにできたもんじゃない。


自然を見極める
寒いから海に入らずマンガを読んでるという次男

今日のファミリーセッションのポイントは、他のサーファーが密集していない小さな砂だまり。寒いから海に入らずマンガを読んでるという次男には少しだけ待っていてもらって、3人で板を抱えて沖へ向かう。

この海岸はいつも海底まで見通せるほどクリアだけど、今日は一段と水が透き通ってキレイ。波をとらえてボードが滑り出すと、まるで宙に浮いているような不思議な感じだった。

うまく波をとらえる

自然は自分の思い通りにコントロールできっこない……。この暮らしをしているとそう思い知らされることも多い。しかし、だからこそタイミングを見極めてボードを漕ぎ出し、うまく波をとらえ、乗りこなしたときの喜びは大きい。

自然のエネルギーと一体になれるサーフィンという遊びを、家族と共有できることに感謝。ひんやりとした師走の海に浮かびながら、この幸せを噛み締めた。


乗りこなしたときの喜びは大きい
幸せな日常