STORY

シンプルだから奥深い、
ワカサギ釣りに魅せられて

シンプルだから奥深い、ワカサギ釣りに魅せられて

日の出とともにボートを漕ぎ出し、小さなタックルで小さな魚を釣る。数年前からはじめたワカサギ釣りは、もはや僕の冬の定番アクティビティーになった。コツを掴んだと思って爆釣したかと思えば、その次に行ったときは激渋だったり。まだまだ運頼りな部分もあるけど、そうやって一喜一憂するのがアウトドアの楽しみ。創意工夫しながら、自分のスタイルを日々探っている。

 

冬の風物詩を釣る

冬の風物詩を釣る

僕が住むのは群馬県の高崎。上毛かるたでは「関東と信越つなぐ高崎市」の札で読まれる地方の街であり、僕の生まれ故郷。キャンプや自転車、クルマ遊びなんかはフィールドが近くにいくらでもあるし、どこか遠出をするにも渋滞にあまり巻き込まれない。それにあんまり都会的な生活は僕には向いていないから、ここでの暮らしがピッタリなんだと思う。

ただ一つ不満をいうなら、海に行くとしたら少し遠いこと。見方によっては日本海に行くにも太平洋に行くにも同じぐらいの距離にあるのはメリットであるものの、どっちにせよ海に出るまでには片道2、3時間は運転しなければならない。


片道2、3時間の運転

渡り鳥みたいに、春ならサイクリング、夏なら高原でキャンプというように、その時々で気持ちの良い遊びに興じるのが僕の性分。だけど、釣りは季節で対象魚を変えながらいつでも楽しめるし、他の遊びとも絡めやすいから、結局年中やってるかもしれない。特に春や秋のカヤックフィッシングシーズンは、海なし県民なのにかなり頻繁に海に繰り出している。

そんな僕が冬によくやっているのは、近くでできるワカサギ釣り。ホームレイクなら貸しボートが始まる6時半を目指そうと思っても、6時に家を出ればOK。海釣りに行くときと違って深夜に長距離運転する必要がないので体力的にとても楽だし、釣り自体ものんびりしてるから、休日のリフレッシュには最高だ。


行きつけの湖

今日は、そんな僕の典型的な冬の休日。足グルマのスズキ・ツインに道具を積んで、朝日煌めく行きつけの湖にやってきたのだった。

ここは農業用水の貯水池として作られた人工湖。貸しボートだけでなく桟橋からも釣りができるし、レンタルロッドもあって仕掛けさえ入手できれば初心者でも楽しめるから、土日になると家族連れやカップルもやってくる。僕は基本的には一人でワカサギと戯れることが多いけど、たまには息子と一緒に晩御飯用のワカサギを釣ることもある。

 

ボートから望む朝日

ボートから望む朝日

ここに通っている人は地形も把握していて、今はどの水深の場所に多く魚が回遊しているか頭に入っているから、特定の場所にボートが集中。ワカサギ釣りはノホホンとした釣りだけど、貸しボートの受付直後は、毎朝ワカサギ釣り師たちによる熾烈な場所とりボートレースが繰り広げられるんだ。

僕はのんびり準備をしてたから、第一陣の争いを避けてゆっくりとオールで漕ぎ出した。


ボートが並ぶ

この湖はポイントにロープが張ってあるので、それを利用して船付けするのが基本。だから人気のポイントには隊列を組むかのようにボートが並ぶ。


雰囲気の良い人工湖

ここは人工湖だけど、赤城や榛名山の峰も見えて雰囲気は悪くない。それに家から数キロの場所にあるし、貸しボートの値段も良心的だから気軽に通える。

他にも、群馬県西部なら榛名湖もワカサギ釣りのメッカだし氷上釣りも有名だけど、僕はここのところ惨敗。温暖化なのか氷上釣りなんかここ何年もできていないみたいだし、やっぱり近所の湖でしっぽり釣り糸を垂らすのが今シーズンの気分なのだ。

  • 釣り師
  • 魚群探知機


ポイントに着いたら、リール台をボートの縁に設置して、魚群探知機もセット。2本用意してきた竿に仕掛けとエサを付けて、今朝は水深13m前後まで糸を送ってみた。

ワカサギ釣りは基本的に難しいテクニックもないし、決してダイナミック釣りじゃない。それでもわずかな穂先の反応や鈴なりにヒットした喜びなど、他では味わえない魅力もある。過去の実績をもとにポイントを探ったり、自分が心地よく釣れるセッティングを考えたりと、奥深い世界が広がっているってことを、ベテランワカサギ釣り師の背中が物語っている。

 

食べるためだから
気合いが入る

食べるためだから気合いが入る

僕がワカサギ釣りを始めたのは数年前。基本的に魚は食べるために釣りたいタイプだから淡水はあんまりやってこなかったんだけど、そういえばワカサギって食えるよなって思い出して。それでやり始めたらハマっちゃって、今じゃすっかり冬のメインアクティビティになった。

「魚を食べるために釣りをする」という思考が芽生えたのは、鹿児島の大学に進学して海の近くに住んでいたとき。時間はあるけどお金のない大学生だったから、食料をハントする感覚で釣りを覚えていった。それから20年以上が経って道具も経験値も増えたけど、気持ちはあの当時のままなのかもしれない。


餌箱

四駆遊びにキャンプ、ソーセージ作り、木工、カヤックといろんなアウトドア趣味にハマってきて思うのは、遊びのなかに自分なりの楽しみ方を見つける作業が一番楽しいってこと。

DIYをやるようになってからは、「理想のモノがまだ存在しないだけであって、作ればある」っていうのが僕の信念に。キャンプ用品や釣り用品で良いものがないと思ったらすぐに自作。この餌箱も、オガ屑とサシの分離だけでなく、釣り終わったあとのサシの保管ができるようにと工夫を凝らしたものだったりする。


アウトドアで遊ぶ
釣れた

ただ自然に身を委ねるという楽しみもある一方で、アウトドアで遊ぶっていうことは、状況に応じて工夫し、フレキシブルに対応するということ。釣りだって、どうしたら魚が釣れないのかを考えて、苦悩するのも釣りの醍醐味なのだよ……。

とかなんとかいいつつ、調子が良ければ100を超えていてもおかしくないのに、昼までに釣れたのは30匹ちょっと。経験上、晴天の昼間に粘ってもしょうがないと判断して、潔く家路につくことにした。

 

アフターフィッシングは
ガレージで

アフターフィッシングはガレージで

赤城の山を横目に、戦略的撤退を決め込んだ昼下がり。せっかくの休みなんだから木工で何かを作ってみよう。そう思い立って自宅のガレージに向かう。いつもは目的を持って作り始めるけど、練習がてら木をいじっていれば、きっと良いアイデアが浮かんでくるだろう。

設備が揃ったガレージ

昔はちゃんと二台駐めることができたガレージが、一台しか駐められなくなって随分経った。最初は友人が使ってないからと貸してくれた一台の木工旋盤だけだったのに、各種の電動工具に飽き足らず、糸ノコ盤やボール盤、ベルトサンダー、フライス盤、木工用集塵機……と機材が増えていった。今やそこらのホームセンターにある工作室以上の設備が揃っている。


木工作品

なまじ、最初に作ろうと思ったのが難易度の高い木の回転スツールだっただけに、ちゃんと技術を習得しなければならず、完成した頃にはすっかり木工の虜に。キャンプ用品を作ったり、家の周りのモノをなんでも木で作るようになって、最近じゃ木工作品の制作を依頼されることも。


楽しくてなんでも作りたくなる

鯉のぼりとか鏡餅を作ったりしていると、僕自身「そのモノが必要だから木工をする」のか、「木工をしたいからモノを作る」のかわからなくなってくる。なかには全然実用的じゃなかったり、合理的じゃなかったり、作るより買ったほうが安いよなって思うモノもあるけど、自分のなかでノっちゃうと、楽しくてなんでも作りたくなるんだよね。

木工も釣りも……っていうか、あらゆる趣味は結局自己満足。それだったら、自分でも限界って思うまで、自己満足を追求していきたいと思う。


sunocotty

Instagram: @sunocotty