STORY

キャンプツーリングに
魅せられた男たち

キャンプツーリングに魅せられた男たち

長い期間を経ても価値が揺るがないクロモリ製バイク。その中でもとりわけ多目的に遊べるマルチパーパスバイクの、その魅力と実力をフィールドで存分に感じてほしい!そんな信念を持って開催されている「KCO」は、僕が勤めている自転車屋が行っている、キャンプツーリングイベント。店の看板を背負っているだけにお客さんの案内をしなくちゃならないけど、実際僕としては趣味の延長線上。妻と娘に後ろ指刺されることなく遊びに行けるから、ほんと役得でしかない。

 

仕事が遊びで、遊びが仕事で

仕事が遊びで、遊びが仕事で

僕の名前は渡邉凌馬。横須賀にあるサイクルショップ「影山輪業」で接客、メカニックを担当している34歳。界隈ではカゲリンのリョーマとして知られているとか、いないとか。以前は東京都内の趣味の雑誌に特化した出版社で編集の仕事をしていたけど、趣味が高じて27歳で自転車屋の道へ。ある程度写真が撮れたり原稿も書けたりするので、横須賀店の広報関係も任されていて、SNSや取材対応のほか、イベントの企画運営なんかも僕の仕事となっている。

今日は僕たちが年に数回不定期に開催しているライドイベント「KCO(Kagerin Camp Out) 2024 Spring」の日。13人の参加者を引き連れて一泊二日のキャンプツーリングに出かけるのだが、実はアテンド役が僕1人というのは初めてのこと。少し不安な気持ちはあったものの、協力的なお客さんたちと心地よい青空が僕の不安を払拭してくれた。


東京湾フェリー

土曜日の午前7時40分。久里浜の東京湾フェリー港に集合した面々。常連さんがいつものようにギリギリでやってきたけど、無事に誰も取り残されることなく船に乗ることができた。

影山輪業はクロモリバイクを推しつつオールジャンルをカバーする横須賀店と、スポーツバイクブランドに特化した杉田店の2店舗があり、お客さんの多くは三浦半島が地元の人や、この辺りに走りにくる人たち。今日はみんなが走り慣れている三浦半島でなく、東京湾を渡った先にある房総半島に向かい、40kmほど走ってキャンプ場を目指す。

キャンプツーリング

僕が自転車に酔心したきっかけはキャンプツーリング。学生時代からロードバイクに凝って乗っていたものの、自転車+キャンプの組み合わせの楽しさを知って以来、さらに自転車が好きになった。それだけに、このKCOの企画に対する想いもひとしお。今日の参加者のなかにはキャンプツーリング自体が初めてという人もいるから、良いイベントになるよう気合いも入る。

 

束の間の船旅

束の間の船旅

8時20分。定刻どおりに出港したフェリーは対岸の金谷港へと進む。この日は巨大な望遠レンズを手にした“撮り船”の方々が多く、デッキに出てみると遠くに自衛隊の掃海艦「あわじ」の姿が見られた。

生まれも育ちも横須賀の僕にとって米軍や自衛隊の船は珍しいものじゃなく、すっかり見慣れてしまったけど、各々が趣味に生きる週末のムードが心を和ませてくれる。

  • クルージングの時間
  • クルージングの時間

横須賀の自転車乗りにとってフェリーは割と身近な存在で、今回の参加者たちも何度も乗船済み。40分ほどの船旅はみんな景色を眺めるわけでもなくバイク談義に終始し、クルージングの時間があっという間に過ぎていった。

別に決まりがあるわけではないけど、今回の参加者が乗っているのはクロモリフレーム。保管状態次第では一生涯乗れるし、スペックだけに縛られないジャンルともいえる。それもあって、皆が個々に個性を発揮している。初めましての人同士でも、バイクの話をしているだけですぐに打ち解けられるっていうのも、自転車の魅力だ。

マルチパーパスバイク

僕らのいうマルチパーパスバイクとは、オンロードでもオフロードでも、日常でも使える守備範囲の広い自転車のこと。乗り手も様々で、自分とは違う考え方の人に出会えるし、何よりフィールドを問わず自転車の魅力を感じられる。だから、このバイクをオススメする僕らがキャンプツーリングイベントを行うっていうのは、かなり理にかなっていると思う。

 

海を渡って山を超えて

海を渡って山を超えて

フェリーから降りれば、そこは南房総の玄関口である金谷。この鋸山の麓の港から田園風景が広がる内陸部を走り、外房のほうにあるキャンプ場までライドする。あらかじめ有志で下見ライドに来ているのでルートはバッチリ把握しているけど、大所帯のアテンド役としてしっかり仕事をしなければ。

いざスタート

3、4人ひとチームになって、隊列を組んでいざスタート。仕事というテイで来ているものの、お客さんを無事に見届けるという指名がある以外はほとんど遊び。それに、参加者車両の多くは僕が組んだもので、その走りを眺めることができるのも嬉しいし、お客さんの笑顔が見れるのも自転車屋冥利につきる。

峠越え

海沿いの街を抜けて山のほうへ向かえば、急にワイルドな道が出てくるのが房総ライドの魅力。今回のルートは、マルチパーパスバイクの魅力を味わうべく、平坦な道ではなくあえて何度も峠越えをするようにプランニングした、カゲリン謹製。里山の景色が感じられる裏道や、うらびれた林道を巡る素朴で起伏のある道が組み合わされた、結構な自信作だ。

積載や荒道にも耐えうるタフさ、積載ができる実用性、遠くまで行ける走行性能。参加者たちも、きっと愛車の素晴らしさを実感できたのではないだろうか。

 

房総の豊かさを感じる
里山ライド

房総の豊かさを感じる里山ライド

時折自転車から降りて歩きたくなるような傾斜に心を打ち砕かれそうになっても、その先には気持ちの良いダウンヒルが待っている。荒れた舗装林道をとおり抜けた先の牧場脇の下り坂では、まだ温まりきっていない初夏の空気が、汗ばんだ身体をクールダウンさせてくれた。

ランチスポット

港を出てから約2時間。ルートの約半分を過ぎたあたりで、今日のランチスポットにたどり着いた。伊予ヶ岳麓に位置する「HEGURI HUB」は廃校の跡を利活用した複合施設で、緑豊かなサイクリストの憩いの場。併設されているカフェで、名物のポークハンバーグやトンカツ、チーズ焼きカレーを食べて、後半に向けてエネルギーをチャージした。

房総にはこういった自転車を歓迎してくれる店も多く、道の駅のように気軽に立ち寄れる場所が多いのも嬉しいポイント。それに、神奈川に比べて道も広くて信号も少なく、走りやすいんだから、サイクリストが多いのも頷ける。

サイクルツーリズム協会の拠点

特にこの施設はサイクルツーリズム協会の拠点の一つということもあって、サイクリストフレンドリーなサービスも充実。レンタサイクルもやっていたり、コワーキングスペース、ゲストハウス、そしてシャワーやキャンプサイトまで完備している。

「もう後半のライドをやめにして、ここでテントを張って寝ようよ」なんて冗談を言い出すお客さんもいたけれど、まだお昼を過ぎたばかりで、ビールを飲むには早いし運動もまだ足りない。たっぷりとお昼休憩をとったあと、再び目的地までペダルを漕ぎ出した。

昼休憩後

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