STORY
釣りとキャンプに
連れられて
全然アウトドア派じゃなかった私が、外遊びの面白さに気がついたのは夫のおかげ。土曜朝の早起きはいつまで経ってもなれないけれど、助手席でうとうとしているうちに、自然に連れて行ってもらえるというのは悪くない。今日は去年同様にキャンプと釣りのイベントに参加するというので、富士山麓が目的地だった。
湖畔で過ごす週末
去年から始まった「BASS FISHING CAMP」は、キャンプとバス釣りを一緒に楽しめる、初心者にも優しいアウトドアイベント。万年釣りビギナーの夫は、メーカーの人に教えてもらえるチャンスだと今年も私の知らぬまにエントリーをしていて、当然のように私を連れ出した。
中央道の渋滞にハマるのが大嫌いな夫は、12時に受付開始なのにもかかわらず朝6時に家を出発。河口湖のファミレスでゆっくり朝食をとり、そしてスーパーでたんまり食材を買い込んでキャンプに備えた。
イベント会場の西湖自由キャンプ場からは富士山は見えないものの、樹海の濃い緑やウォーターレジャーに勤しむ人たちをみていれば、夏休み気分も爆上がり。街ではいつも日傘をさして歩いている私も、日焼け止めを塗りたくって遊びモードに切り替える。
キャンプイベントといっても、別に時間的な拘束がなく、各々好きなときに好きなことができるというので、まずは自分たちのキャンプサイトを作ることに。真夏といっても東京と違って風が心地よいから、タープの下にいさえすれば暑くなかった。
キャンプ以外の楽しみも
参加したこのイベントは、私たちのような初心者でもバス釣りが楽しめるようにというコンセプトのようで、手ぶらで行っても釣りが楽しめるよう道具が用意されている。去年はずっと昼間から夜になるまでルアーを投げ続けた記憶があるけど、それで日中はあんまりお魚も食欲がないということがわかったから、今回は日中はのんびり時間を過ごして、夕方以降に釣りをすることにした。
実際、釣りをしなくても時間が潰せるようになっていて、物販コーナーには釣り道具ではなく、可愛いグラフィックのアパレルたちも並んでいた。普段釣具屋さんに行かない私は全然知らなかったけど、かなりカジュアルなアイテムもあることを知って少し驚き。アウトドアブランドのTシャツを取り入れるのは女性のファッションでもよくあるけど、シマノを着ていたら差別化できるのでは? そんな下心に突き動かされて、イベント限定だというTシャツを一枚買ってみた。
それに、親子連れの参加者も多いからか、今回もこどもから大人まで楽しめるようなコンテンツが充実。小さい子はテントのなかでお絵描きをしたり、お母さんと一緒に課題をクリアしていくネイチャービンゴをしたり。私たちは初対面の参加者と一緒に家族対抗でモルック勝負をして、大逆転負けをして大笑いした。
小さな子どもたちが遊べる場所があるのは、釣りをしたい大人たちの免罪符にもなるし、よくできている。もし私たちが子どもを持ったら、きっとうちの夫もキッズエリアもあって子どもも楽しいからと、私たちをここに連れ出すんだろうな。
私たちのブラックバス
ひとしきり遊んだあとは、葉山のコーヒー屋さんが淹れてくれた冷たい水出しコーヒーで一服。酸味が少なくコクがあるブラジルは私の好みのドンズバで、湖畔のロケーションもあいまって最高の気分。どんなカフェに行ったってこの体験ができないだろうと、一口ごとに口に広がるビターな香りを噛み締めた。
そうこうして私たちが遊んでいるうちに、遠くではシマノのスタッフさんがブラックバスを釣り上げた。サイズは小さいけれど、こんな日中でも釣れることを証明してくれたし、空想上の生き物じゃなくちゃんとバスって存在していたんだと感心したのは私だけではないはず(笑)。
そして、リアルなバスをお目にかかったところで、ハリガネを曲げて作るブラックバス作りに挑戦した私たち。お手本どおりにやっていけば上手にできるだろうと思うんだけど、ところがどっこい人によっては個性的な仕上がりに。ペンチを使ってぐにゃっと曲げるのは結構難しくて、一箇所の歪みが次の歪みを生み出し、予想してなかった味わいが生まれて……。持って帰ってきたハリガネバスを見るたびに、このときのことを思い出されるくらい、素敵な作品ができたと思う。
戦の前の腹ごしらえ
一通り催しを堪能したあとは遅めの昼食の支度を。30℃には届かないものの、暑い日中を乗り越えるために冷たいものがいいだろうと、スーパーで買い出したのはご当地の味である吉田うどん。ネットでみた梅と大葉を和える冷製レシピを参考にしつつ、アドリブでアボカドもトッピングしてみた。吉田うどんはお店で食べるばかりで今回初めて自分たちで調理したけど、15分も茹でる必要があるとは知らなかった。
案の定アボカドは独立したアボカド味。でもそれ以外は夏のお昼にぴったりで、梅のしょっぱさと大葉の香りが爽やかさを感じさせてくれた。
密かに闘争心を燃やして
太陽も少し傾いてきたしお腹も膨れたので、いよいよバス釣りに挑戦。去年もここで習ってちゃんと竿を振れるようになったはずなのに、自分でも不思議なくらいリールの使い方を覚えてなくて結局振り出しからスタート。
まずは人差し指に糸をかけて、リールのベールを起こす。そして、周りに人がいないことを確認して、竿を振って、10時くらいの角度で人差し指にかけた糸を離す。シマノのスタッフの方にイチから教わって、なんとか投げられるようになった。
そうこうしているうちに他の参加者の方が大物をゲット。海じゃなくてもこんなに大きな魚がいるのかと、超ビギナーの私は感激し、同じくビギナーの夫は夢を描いてやる気になったようだ。
「みんながルアーを投げている場所にいても、俺には釣れっこない」。そう言い放った夫は、ある程度投げれるようになった私を置いて、ひとりでどこか遠くの場所へ。なんのために自転車を持ってきたのだろうと思っていたけど、彼はハナから私を置いて釣りをする準備をしていたわけだ。
ちょうど新発売のパックロッドも当日貸し出しをしていたこともあり、夫はそれを借りて意気揚々と湖畔の人気の無いほうへと走って行った。
どうせ場所を変えたとしても、釣れずに戻ってくることは目に見えている。それでも突っ走るのが彼らしいところであり、勝手に遊べるだろうと私を1人にするのも、私の性格をわかってのこと。とりあえずは、いつか釣りにいくときに問題なく投げられるように、身体にキャスティングの作法を叩き込もう。焦らず確実に。日暮までどうせ時間はたっぷりある。
まずは基本を覚えて、あわよくば夫より先に魚を釣り上げて、大きい顔をしてやるんだ。