STORY
僕のたどり着いた、
快適キャンプの理想系
キャンプ好きにとって親子でアウトドアを楽しむのはちょっとチャレンジングだ。気温の変化も激しく、衛生面でも不安のあるフィールドに子どもを連れていくのは、やっぱり親として躊躇してしまうし、かといって子どもたちの面倒を妻に任せて自分だけソロキャンプをしにいくというのも気が引ける。僕の場合は、幸いにも庭付きの自宅があるので庭キャンプで欲求を満たしているが、これが想像以上に快適。むしろ普通のキャンプ以上に楽しんでいる自分がいる。
ライフステージとともに変わる
アウトドアの楽しみ方
2020年春に完成した我が家は、広い庭付きの平屋建て。親戚から譲り受けた畑の一部に建てたこともあり、周囲には田園風景が広がる絶好のロケーション。庭で焚き火をしても誰にも気兼ねなく楽しめる環境は、アウトドア好きの僕にとって理想的だ。
芝生で覆われた庭の片隅には、僕専用のガレージがある。もともと妻から「趣味の道具で家を散らかさないでね」と言われたことがきっかけで、クルマを置く場所ではなく、マリンスポーツやキャンプ、DIYのギアを収納するためのスペースとして設計。今では僕の憩いの場所となっている。
子どもの頃、実家の自然豊かな環境と親子でのキャンプ体験が、僕のアウトドア愛の原点。その影響もあってか、海のない埼玉で育った反動からか、茨城で過ごした大学時代はサーフィンにのめり込み、サークル活動ではサーフスキー競技に参加。さらにはライフセーバーのアルバイトまでしていた。
今でもマリンスポーツは続けているものの、埼玉に戻ってからはキャンプに出かけることが増え、結婚前は妻と一緒に山よりのアウトドアを楽しんだ。そして長女が生まれて、我が家ができてからはDIYに目覚め、庭キャンプにどっぷりハマる日々を過ごしている。振り返れば、アウトドアの楽しみ方はその時々のライフステージに応じて変化し、僕の生活に寄り添い続けてきたように思う。
ちょうどパンデミックが始まった頃に家が完成し、自宅で過ごす時間が大幅に増えた。世の中に閉塞感が漂っていた時期ではあったけれど、僕にとってはむしろ創作意欲に満ちた特別な時間だった。庭キャンプを楽しむのはもちろん、DIYにもじっくり取り組むことができ、ギア収納用の棚や工作に便利な机を自作。市販品では叶わない、自分だけの理想的な空間を作り上げることができた。
とはいえ、立派な工作室が完成したあと、実際に作ったものといえば、余ったランタンのホヤを使ったキャンドルランタンくらい……。それでも、この庭とDIYスペースがもたらす満足感は格別。自分だけの特別なフィールドがここにあることを誇らしく思ったりもする。
世のおしゃれなキャンパーと比べると、僕はギアにそこまでこだわりがあるわけではない。でも“おこずかいキャンパー”である僕は、モノを買うときは徹底的に調べるタチなので、道具の一つひとつの思い入れも深い。それだけに、ガレージの椅子に腰かけ、集めたギアを眺めながら過ごす時間は、僕にとってささやかな至福のひとときなのだ。
生活の一部となった
庭キャンプ
道具を眺めていると、自然とキャンプ欲が湧いてくるのはいつものこと。そこで、今日もおやつタイムを庭で過ごそうと家族に提案してみた。
妻と2人の娘はで食事をすることは嫌いじゃないけど、完全にセットアップされた状態にならないと表に出てこない。だから僕が1人でコツコツと我が家のキャンプサイトを作り上げながら、彼女たちの登場を待つのが恒例となっている。
どのテントとどのキャンプファニチャーの組み合わせにしようかと選ぶ時間は、洋服のコーディネートを考えるようで楽しい。庭キャンプの場合、普通のキャンプと違ってギアはクルマじゃなくてガレージにあるから、「ちょっと違うな」と思ったらすぐ変えられるし、忘れ物をする心配もないという点でも気楽でいい。
子どもたちがまだ小さいこと、庭付きの自宅に暮らしはじめたこと、家で過ごす時間が増えたこと。いろんな理由があって、とりあえずのキャンプ欲の解消のためにはじめた庭キャンプだったけど、やってみるとその気軽さにすっかり魅了されてしまった。設営も撤収も簡単で、外が寒かったり暑かったりすればすぐ家のなかに戻れるから子どもたちも安心。さらに、キャンプ場の予約も不要というのは本当に気楽。このメリットに気付いてから、庭キャンプは我が家の日常の一部となった。
結局のところ、僕はキャンプ道具を準備する過程が好きで、そこから家族と外でご飯を楽しんでリラックスできれば、それで十分満足。この庭というフィールドでどう楽しむかを考え始めたことで、自分にとっての理想のキャンプスタイルが自然と見えてきた。
それ以来、インスタグラムで「北埼玉のカリスマ庭キャンパー」、「北埼玉のガレージキャンパー」を自称して投稿を始めたところ、意外にも多くの人たちがフォローしてくれている。どうやら、僕と同じ目線でキャンプを楽しみたい人が思った以上に多いんだろうな。
焚き火と家族の温もり
テントを張って焚き火の準備をするよりも、家のなかにこもる妻と子どもたちを外に連れ出すほうが時間がかかった。でも、今日は大好物の焼きマシュマロができると聞くと、長女が目を輝かせて急いで靴を履き、支度を始めてくれた。
季節によって頻度は変わるけれど、我が家では平均して少なくとも月に2回は庭にテントやタープを広げて、家族でテーブルを囲んで昼食をとったり、夜ご飯を食べたり。それが叶わないときは、僕は1人で焚き火を眺めたりして過ごしている。
夏にはタープの下でプール遊びをし、秋から春にかけては温かい飲み物を片手に焚き火を囲んで過ごす。庭キャンプは子どもたちにとってのエンターテイメントであり、僕にとっては家族が楽しむ姿を見ることも最高の癒しとなっているのだ。
今日は、いつか石焼き芋をしようと買っておいた石をダッチオーブンに敷き詰め、裏の畑で採れたサツマイモをなかに投入。新しい料理に挑戦しながら、親父から譲り受けたポットでココア用のお湯を沸かし、焚き火の暖かさに包まれている。太陽が沈むと急に冷え込んでくる今日この頃、12歳の頃から毎年続けている「いつまで短パンで過ごせるか」の挑戦も、そろそろ限界が近づいてきたようだ。
ちなみに僕がキャンプにのめり込むきっかけとなったのは、このダッチオーブン。そして、今使っているホーローのケトルは親父が愛用していたもの。ブランド名もわからない古い道具だけれど、丈夫で使い勝手がいい。このまま使い続けて、いずれは子どもたちにとっても思い入れの深いキャンプギアに育ってほしいと思っている。
人によっては、庭でキャンプをして何が楽しいのかと訝しむ人がいるかもしれない。でも、家族がいればその楽しさはきっと理解できるはず。ただ家の外で過ごすだけなのに、庭キャンプは何気ない日常を特別なひとときに変えてくれるのだ。どこか遠くに出かけなくても、心地よいアウトドアを楽しむ方法は、実はすぐ近くにある。それに気付けた人は、ベテラン庭キャンパーを名乗っていいと思うのだ。
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