STORY
レインウェア
雨の日ならではの冒険

アウトドアに出かけたくなる暖かな日も増えてきた。春は人間も活動的になるし、植物たちも賑わいを見せる。茶がれていた道端の雑草たちもこれから背を伸ばす準備をしているし、いよいよ桜が街を彩る季節ももうすぐだ。外は雨だけど、春は刻々と姿を変える。その一瞬に立ち会うためにもレインウェアは活躍するのだった。
好機を逃さぬために
現代に生きる僕たちホモ・サピエンスの多くは、仕事にたくさんの時間を費やして、自由に行動できるのは休日のみ。美しく、そしてどこか開放的に感じる春を、ただ雨だからといって家に引きこもってしまうのはあまりにも惜しい。雨に濡れる紅梅を眺めたり、来る夏の暑さを前に雨の日の肌寒さを楽しんだりするのは、まさに今だけの特権だ。
そんな「春の雨を楽しむ」行動を後押ししてくれるのが、シマノの「ESレインジャケット 03」。本来はフィッシング用に開発された雨具だが、日常生活のなかでも頼れる存在。ミリタリー調のデザインなので、アウトドアブランドの3レイヤーシェルのようないかにも登山ウェアという雰囲気もなく、日常の街中でも違和感なし。少しオーバーサイズを選べば、抜け感のあるファッションとしても取り入れやすい。
そんな街着として大アリなルックスを持ちながら、やっぱりその機能性に助けられる部分は多い。左胸のフラップポケットのなかには付属のレンズクリーナーを装着できるストラップが備わり、マチ付きなので収納力も抜群。また、シマノのオリジナル生地「ドライシールド+」は厳しい透湿防水基準を満たしているだけでなく、撥水性もバッチリだ。
さらに海水でも水滴を弾き、塩残りしにくい海水撥水機能を持っているのは、フィッシングメーカーだからこそのコダワリだろう。長時間着用していても蒸れにくく、軽やかな着心地をキープしてくれるのがうれしい。
他になにもいらない
という無敵感

上下レインウェアを装備して雨の中を歩いたり、アクティビティを楽しんだりすると、不思議と「雨の日だってアリだな」と思えてくる。子どもの頃にカッパを着てわざと水たまりを踏んでいた感覚を思い出すというか、スーパースターを得たマリオ状態というか。でもかつての僕がそうであったように、その楽しさを知っている大人はあまり多くないようだ。
実際、雨の公園は休日だというのに人影もまばらで、静かな池のほとりを独り占め。ちょっとナルシストっぽいけれど、ベンチに腰かけて水鳥たちがゆっくり水面を移動する様を眺めていると、時間がゆったり流れる。雨音に包まれて心の中までクリーンアップされる感覚も、雨の効能なのかもしれない。


このジャケットの名前にある「ES」とはEnough Storageの略だそうで、その名のとおり、釣りに必要なアイテムを収納するためのポケットやループ、Dカンが充実している。フロントと左腕に設けられたポケットはいずれもアクセスしやすく、雨水が侵入しにくいフラップ付き。ベルクロでしっかり留まるから、屈んだときに物を落としにくいのも大きな利点だ。
ジャケットと同じコンセプトで作られているパンツも、ファティーグパンツのように収納力が高くてルックスも最高。レインパンツでここまで収納力があるアイテムってかつてあっただろうか?
憂鬱な気分を弾き飛ばす

フィッシングウェアとして動きやすさを第一にしているぶん、肩や腕まわりの可動域が広いESレインジャケット 03。そのパターンは、テーラードジャケットの上に羽織るアウターとしても優秀だ。展開カラーは、チャコール、ブラック、パープル、ダークカーキの4種類。なかでもブラックは通勤でも使いやすい。

「ESレインジャケット 03」には、胸にブランドのロゴプリントがないっていうのも結構ファッション的にはありがたい。好きな人は別売りのワッペンを左胸や左腕のベルクロをつけて、アレンジしてねっていうスタンスは、着こなしの自由度を広げている。
裏地は肌触りの良いトリコットを採用しているので羽織るときもスムーズ。この手のジャケットは重ね着をした際に窮屈になりがちだが、この一着があれば雨の日の煩わしさも少し和らぐ。

ちなみにジャケットには収納袋が付属しており、大きめのサイズ設計だからわざわざ折りたたまなくてもサッと放り込める。適当に詰め込んでも余裕があり、急な雨にもすぐ対応できるのは地味ながら心強いポイントだ。日々の暮らしのなかで着脱を繰り返すレインウェアだからこそ、この手軽さはありがたい。
なかなかやる人はいないだろうけど、これさえあれば、朝マズメにちょっと釣りをしてそのまま出勤ということも実現できるだろう。
雨の喧騒と静寂

フードを被り、ジャケットのフード部分を打つパチパチとした雨音を聴くのが昔から好きだった。自分の耳元で鳴る、僕だけの雨のサラウンドシステム。休日だというのに人影のまばらな街を自転車で流し、前から気になっていた隣町の純喫茶へ向かう。雨の日に自転車に乗ると、風はうざったいし泥はねも気になるけど、上下レインを着ていれば問題なし。ペダルを漕いで少し汗ばんでも、持ち前の透湿性で不快感も感じない。

シマノといえば釣りと自転車。だからというわけではないけど、デイリーユースレベルなら自転車に乗るときにもかなり便利な作りだ。前立てが2重になったフロントは雨返しの仕様が施され、裾やフード、袖口などはベルクロやドローコードで調整できるようになっている。
そして、パンツの裾も絞れるから、走行時のバタつきを抑えられる。こうした細やかな作り込みは、雨の日でも軽やかにペダルを踏みたい人にはありがたく、悪天候がネックになっていた通勤やちょっとしたお出かけも、気負わずに楽しめるだろう。

目的地の喫茶店の軒先でレインを脱ぎ、軽く振ると、水滴が粒となって流れ落ちていく。その瞬間、雨の中をやってきたことに対して、ささやかな達成感がこみ上げる。
ガラス越しに見える店内は、外からでは様子がうかがい知れない。少し緊張しながらドアを押し開けると、雨音が遠ざかり、静かなジャズが耳に届く。薄暗い外とは対照的な、落ち着いた空気が漂っている。コーヒーの香りがふわりと広がり、席に腰を落ち着ける常連たちは、タバコの煙をくゆらせながら、それぞれの時間を味わっている。
そんな大人びた空間のなかで、僕はピラフとクリームソーダを注文し、漫画をめくる。雨具に包まれて外を走り回り、喫茶店で甘いソーダを飲む。少し子供じみた行動かもしれないけれど、それが雨の日の楽しみ方だっていいじゃないか。
雨が降るだけで、いつもの街がほんの少し冒険の舞台に変わる。傘を持たずに飛び出したその一歩が、どこへ続くのかはまだわからない。でも、それでいい。雨の日には、雨の日なりの自由がある。

まだお腹には余裕があるから、名物の居留珈トーストとブレンドを追加して、次の行き先に思いを巡らせる。雨が止むのが先か、僕が動き出すのが先か。最高のレインがある限り、行動の選択肢は無限なのだ。