正解のない自然に、今日も惹かれて

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正解のない自然に、
今日も惹かれて

正解のない自然に、今日も惹かれて

もう夏がやってきたのかと思うほどの気温が続いたかと思えば、一転して寒さすら感じる5月半ば。僕がよく行くエリアでは山菜採りの時期も終わったので、今日は渓流に向かうことにした。渓流釣りを始めて今年で2年目。どういう場所で釣れるのか、少しずつわかってきた気もするけれど、自然も動物も一筋縄ではいかない。雨が降ったりやんだりする不安定な天気の中、釣竿片手に流れを遡っていった。

 

雨が降り出した渓流で

雨の中、釣りの準備を整える

埼玉県内の自宅を、まだ真っ暗なうちに出て2時間ちょっとのドライブ。目的地である群馬県のとある渓流に立つ頃にはすっかり明るくなっていたけど、クルマを降りると同時に雨が降り出した。天気予報ではもう少し降り出しが遅いって言っていたけれど、まあしょうがない……。

去年の秋、狩猟を始めるタイミングで買った軽トラは、僕がアウトドア遊びをするときの頼れる相棒になった。こういう雨の日は逃げ場がなくて嫌になるけれど、どうせ一日外にいて雨に打たれるのだから、結局は同じ。むしろ雨で魚の警戒心が薄れて、活性も上がるなら、本来は喜ぶべきなのだ。

雨で靄がかかり、濡れた岩肌が神秘的な渓流

ウェーダーに身体を通し、ロッドを手に取って、いざ入渓。ここはこの前来たときに入れ食い状態だったポイントで、僕に釣りの自信をつけてくれた場所でもある。もともとあまり開けた場所ではないけれど、今日は雨によってより陰影が深く、濡れた岩肌や緑、朝靄が、どこか神秘的な雰囲気をつくり出しているように見えた。

渓流でロッドを構える

整っていない自然の中に身を置くこと。そこに喜びを感じ始めたのは、ここ数年のことだ。それ以前からキャンプをしにキャンプ場に行くことはあったけれど、こうして山や川を駆け回るようになったのは、自然の恵みを食べる豊かさに気づいたからだった。

自給自足に憧れて、春は山菜や潮干狩り、夏は釣り、秋はキノコ、冬は狩猟。時間に融通がきく働き方ができるのをいいことに、僕は週に一度のペースで、どこかしらへ野生の味を求めて出かけている。

ミャク釣りの仕掛けを丁寧に結ぶ手元

とはいえ、自然遊びは奥が深い。知識も、フィールドを読む力も必要で、まだまだ手探り状態というのが正直なところだ。渓流釣りに関しても、とりあえずルアーで始めて最初にビギナーズラックはあったものの、その後は6回連続ボウズ。すっかり心を折られてしまった。

そんな時、川ですれ違ったおじさんに「釣りたければエサが一番だよ」と言われたのを鵜呑みにして始めてみたら、これがけっこう僕の性に合っていた。むしろ、今までのルアーが何だったのかくらいに……。

いつかルアーで釣れるようになったらいいけど、今は釣果をあげることにフォーカスして、ミャク釣りを続けている。

 

遊び相手は突然に

ポイントを絞りながら渓流を釣り上がる

仕掛けをセットして、いざ釣りを開始。一月前にも遊ばせてもらった沢は、明らかに水の量が少なくなっていた。フライやテンカラだったら浅い瀬もポイントになるのだろうけれど、ラインの張り具合でアタリを取るミャク釣りでは、落ち込みやプールなど、ある程度の水深がないと釣りにならない。僕の場合だけかもしれないけれど(笑)。

今日は輪をかけて糸を垂らせるポイントが限られているようだから、一箇所ずつ丁寧に探っていく必要がありそうだ。

釣り上げた小さなヤマメを手の上で観察する

と、水量不足で釣果を憂いていたのも束の間。一投目を水面に入れて5秒と経たずに、目印が水中へ沈んだ。5mある竿の先だけがしなるこの感じ。釣り上げる前から明らかに幼魚だとわかったものの、竿から伝わる魚の躍動感が嬉しい。

ヒレが少し丸まっているところを見ると、稚魚放流された個体かもしれない。くっきりとしたパーマークや透き通った白いお腹を少しだけ観察させてもらったあと、大きくなってまた遊ばせてくれよと願いを込めて、住処に戻してやった。

 

自然遊びが、
人生を見直すきっかけに

渓流での釣りをカメラで記録するほなみ

「やった! さっそく一匹釣れたね!」

ヒットがあったとわかると、遠くからカメラを構えていた“ほなみ”が近づいてきた。彼女は僕の中学時代からの友人で、ここ一年ほど一緒に海や山や川で遊びながら、僕の活動を記録してくれている。

僕たちが一緒に活動するようになったきっかけは、ふと誘った山登りだった。山なんてほとんど登ったことがないと言いながら、一眼レフを構えた彼女に写真を一枚だけ撮ってもらった。その写真がとても良くて、「一緒に動画も撮ってみない?」と声をかけたのが始まりだった。
そこからInstagramを開設し、まずは動画撮影の練習からスタート。撮影も編集も手探りで覚えていった。試行錯誤を重ねながら投稿を続けるうちに、やがてYouTubeも始めることになり、アウトドア遊び初心者の挑戦を記録することが、少しずつ僕たちの活動になっていった。

スマートフォンでTRIGGER BASEのSNSを確認する

「TRIGGER BASE」と名付けた僕たちのSNSアカウント名には、誰かが何かを始めるトリガーになれたら、そして見てくれる人たちの拠点のような場所になれたら、という思いが込められている。

そう言うと少し大げさに聞こえるかもしれないけれど、アウトドアに出て自然の恵みをいただくという遊びに辿り着けたことは、僕自身にとっても大きな救いだった。
子どもたちと離れて暮らすことになり、心にぽっかり穴が空いたような日々を過ごしていた時期がある。何をしていても気持ちが満たされず、人生が少し味気なく感じられていた。そんな時に、もう一度外へ踏み出すきっかけになってくれたのが、山や川で過ごす時間だった。

渓流の岩場を踏みしめながら上流へ向かう

無理をして更新しているわけではなく、あくまで遊びの延長。SNSに僕の遊びの記録をつけているのは、まずは誰かではなく、自分の人生から変えていこうと思ったからでもある。

「一番最初にTRIGGER BASEの影響を受けたのは、私だと思うよ。何をしていても楽しいと思えなかった頃、えいきが“第二の人生”みたいに、自分のやりたいことへまっすぐ進んでいて、それがすごく眩しく見えたんだよね。今、毎日が楽しいと思えるのは、えいきがきっかけをくれたからだと思ってる」と、ほなみ。

このアカウントを始めた頃、彼女もまた悩みを抱えていた。でも、今まで触れたことのなかった世界に飛び込んで、その表情は以前より朗らかになった気がする。

 

見知らぬ沢で暗中模索

次のポイントへ移動する軽トラック

数少ないポイントを探りながら釣り上がって数時間。魚影はあるけれど、初っ端に釣れた小ぶりなヤマメ以来、アタリは一切なし。しびれを切らした僕たちは、別の流れへ移動することにした。

橋の上から新たなポイントとなる沢を見下ろす 落ち葉の斜面で見つけた大きなカエル

朝5時から釣り券を販売している地元の旅館。その主が教えてくれた、イワナが釣れるというポイントが新規開拓の目的地だ。川までのアプローチはなかなか大変そうだけれど、そうした冒険感も含めて、この遊びの魅力だと感じる。

斜面には、膝まで沈んでいくほど積み重なった落ち葉。ふかふかの踏み心地に一喜一憂しながら進んでいると、大きなカエルを発見した。サバイバル系ユーチューバーなら食べるのかな? なんて余計なことを考えつつ、一歩一歩、慎重に沢へ降りていく。

イワナを求めて沢の奥へと分け入っていく

橋の上からは見えなかった沢の奥へ、釣り糸を垂らしながらゆっくりとリサーチ。徐々に上流部らしいゴツゴツとした渓相が現れたけれど、浅瀬と落ち込みが繰り返される感じで、僕のミャク釣りのスキルでは太刀打ちできない。

白泡立つところに餌を投げ込むも、その中に果たして魚は潜んでいるのか。ブドウ虫は魚にとって美味しそうに流れているのか。思考が釣れない時の無限ループに入ったところで、今日はもうあがることにした。

 

釣れない日も、いい経験

釣りのあと、野外でクッカーを使って料理をする

以前、釣れない日々を過ごしていたとき、釣果以外に楽しみを見出した。それは、野外で料理を作って食べること。昨晩作ったおにぎりでも、現場でテキトーに作った焼きうどんでも、身体を動かしたあと、地べたに座って自然を感じながら食べるものは美味しい。
もちろん、山菜を天ぷらにしてその場で食べたり、釣った魚を捌いたり、採れたての何かを料理できたらなお最高だ。けれど、たとえ大きな魚が釣れなかったとしても、火を使い、湯気の立つ鍋を囲みながら「今日は何がよくなかったんだろう」と話している時間は、それだけでちゃんと楽しい。

バーナーで焼きうどんを調理する

考えてみれば、僕のアウトドア遊びは、いつもそんなふうに失敗と発見の繰り返しだ。山菜採りでは似たような葉っぱに迷い、キノコは図鑑を見ても最後の確信が持てない。狩猟だって、山の歩き方も、獲物の気配の読み方も、まだまだわからないことばかり。釣りも同じで、ポイントを選び、餌を流し、魚のいる場所を想像してみるけれど、自然はそんなに簡単に答えをくれない。

その日の釣りを振り返りながら動画を撮影する

料理を撮影しているときに話しているのは、たいていその日の振り返り。今日に関しては、幸先がよかっただけに、少し慢心してしまったのかもしれない。雨が降っていること自体、コンディションとしてはよかったはずなのに、水量が少なかったのか、ポイントの見切りが遅かったのか、そもそも餌の流し方がよくなかったのか。考察をするにも、まだまだ解像度が低い。
でも、その解像度の低さも今は面白いと思える。わからないから、また来たくなる。悔しいから、調べたくなる。次はこうしてみようと思えることが、ひとつでも残れば、その日はもう十分な収穫なのかもしれない。

渓流に立つふたりの釣り人

TRIGGER BASEという名前には、誰かが何かを始めるきっかけになれたら、という思いを込めた。けれど実際には、僕自身がいちばんこの遊びに背中を押されているのかもしれない。釣れない日も、うまくいかない日も、知らないことに触れて、少しずつできることが増えていく。その感覚が、また次の休日を外へ向かわせてくれる。
何かしたいけれど、一歩踏み出せない人の、小さなきっかけになれたら嬉しい。僕もまた、いろんな遊びに挑戦しながら、少しずつこの世界を深めていきたい。

Instagram: @trigger.base
YouTube: @TRIGGER-BASE

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