トレーラーで楽しむ桧原湖

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トレーラーで楽しむ桧原湖

トレーラーで楽しむ桧原湖

猪苗代湖に比べると規模は小さく少し控えめな印象だけど、美しい森に囲まれた野生味のある桧原湖。磐梯山の噴火によって生まれたこの火山性堰止湖は、点々と小島があってカヤックで漕ぎ出すだけでも楽しい。そんな箱庭のような自然風景とバス釣りに魅せられて、気付けば新緑の季節の釣り旅は、私たちの恒例行事になっていた。還暦を過ぎてもなお、家族に送り出され、男友達と釣り旅行に出かけられる。それは本当にありがたいことだと思う。

 

一路福島へ

橋の欄干越しに桧原湖と磐梯山を望む

遠くの山には、谷間に沿ってまだ雪が残っている。半袖では少し肌寒くも感じる、初夏の福島。自宅から4時間ほどかけてやってきたのは、裏磐梯・桧原湖だ。季節外れの台風でギリギリまで肝を冷やしたけれど、今日は青空が広がり、湖面は空を映してコバルトブルーに輝いている。雨の桧原湖も嫌いではないけれど、こうして晴れてくれると、やっぱり気持ちがいい。6月初旬、気の置けない仲間と一緒に桧原湖にやってくるのは、ここ20年近く続いている私たちの恒例行事。家族公認で、男だけの2泊3日。釣りをして、食べて、飲んで、眠る。やっていることは昔からほとんど変わらない。

助手席の友人と笑顔で北へ向かう車内

もう30年も前のことだけど、バス釣りブームに乗じてあちこち出かけた私たちが最終的に行き着いたのはこの場所。いつも通りカヤックをクルマのルーフに載せて、仲間の高橋くんを迎えに行き、北を目指す。

彼とは釣りを始める前からスキーにも一緒に行っていて、気付けば人生の半分くらいを一緒に遊んでいる。私の還暦記念の旅行として、お互いのパートナーも巻き込んでスウェーデンのロングトレイルを一緒に歩いたりもした。仕事の同僚として出会った相手だけど、仕事以外の時間をずいぶん長く一緒に過ごしてきた、気心の知れた友人なのだ。

カヤックを屋根に積んだ車とトレーラーで桧原湖キャンプ場に到着

ただ、今年はひとつだけ大きく違うことがある。私がキャンピングトレーラーを引っ張ってやってきたことだ。
これは定年退職後の人生を見越して、去年思い切って購入したもの。長年欲しいとは思っていたが、妻の承認を得るのがいちばんの難関だろうと勝手に思い込んでいた。ところが、キャンピングカーの展示場を訪れた際、彼女は意外にも前向きな反応。試乗で私がトレーラーを牽引する様子を後ろから見て、「いいじゃん」といってくれた。その言葉をいいことに、勢いで購入にこぎつけたシロモノなのだ。

 

変わるものと、
変わらないもの

車とトレーラーをヒッチで接続する作業

トレーラーは、自宅の駐車場にぎりぎり入るサイズ。牽引免許なしで運転できる大きさとはいえ、はじめはバックの際に、曲がりたい方向と逆におしりを振らなきゃいけないことに悪戦苦闘した。今ではずいぶん慣れたもので、来年の春に迎える定年退職を前に、すでに慣らし運転は終え、連結も設置もお手のものになりつつある。

旅をするときも、一度キャンプ場やRVパークにトレーラーを置いてしまえば身軽に動ける。特に家族で旅をするときは愛犬のラブラドールも一緒だから、ペットホテルをわざわざ探して予約して、高いお金を払う必要もない。トレーラーは愛犬家にとっても、何かと利便性が高いのだ。

キャンプサイトに集まった仲間たち。カヤックを積んだ車とトレーラーが並ぶ

タープを張って、外にキャンプリビングを設営。高橋くんもマイテントを立て終えた頃、もう一人のメンバーである菅野さんも到着した。

「カヤックを上に積んで、トレーラーまで引っ張って。めっちゃかっこいいじゃん!」。そう言いながらクルマから降りてくる彼も、かつて同じ職場で働いた元同僚。今はそれぞれ別の場所に住んでいるものの、年に何度か家族ぐるみで遊んだりもしている。

 

トレーラーに魅せられた地で

トレーラー内のキッチンでコーヒーを淹れる

朝からの長距離ドライブを経て、一段落。トレーラーには冷蔵庫があり、お湯も出る蛇口に、二口のガスコンロも搭載されている。これまで通りのキャンプなら、コーヒーを沸かすのも地味に手間がかかったけれど、この設備があれば家にいるような感覚で、さっと作業ができる。

キャンプもよくしてきたし、テントで外の空気を感じながら過ごすのは今でも好きだ。けれど、一度トレーラーの楽さを知ってしまうと、これまでのスタイルには戻れなくなりそうで、ちょっと怖いくらい。

トレーラーのオーニング下で語らう3人

そもそも、トレーラーの魅力を知ってしまったのもこの桧原湖だった。今は「ビースタイルキャンプサイト」という名前の湖畔キャンプ場になっているけれど、昔は「レイクランドヒバラ」という名前で、欧米型リゾートライフを満喫できるという謳い文句のもと、大型トレーラーを客室として宿泊できた。

シャワーも冷蔵庫も、ベッドも家電もある。それでいながら、外に出れば桧原湖の美しい自然が広がっている。老朽化で宿泊用のトレーラーはなくなってしまったけれど、当時は毎年のようにそこに泊まりながら、「いつか自分たちでもトレーラーが欲しいね」と話していた。だから今年、こうして自分のトレーラーでこの場所に来られていることには、少し感慨深いものがある。

 

遊びの準備はこれにて完了

ルーフから協力してカヤックを降ろす

談笑しながらゆっくりコーヒーを飲み干したあとは、後回しにしていたカヤックの荷下ろし。これが結構大変で、毎回下ろすたびに、よく20kgもあるものを一人で上げたなと感心する。さっきまで風が冷たいと思って上着を着ていたのに、ロープを解いて下ろすまでに、じんわりと汗が滲む。今は人手があるからまだマシだけど、それでもやっぱり一仕事だ。

カヤックを担いで湖畔へ運ぶ

キャンプ場は桧原湖の入江に面していて、その浜からすぐに漕ぎ出せる。ここが私たちの定番の場所になっている理由のひとつは、この手軽さにある。土日は賑わう場所だけれど、平日は他のお客さんも少なく、ほとんど貸切状態。周りに気を使わずに過ごせるのもありがたい。

それに、風が強いときでも湾内には必ず風下になる場所があり、カヤックに乗っていても比較的釣りをしやすい。キャンプ場としても釣り場としても本当にいい場所だから、人に薦めたい気持ちはある。けれど、できることならいつまでも私たちの秘密の場所であってほしい。そんなわがままなことも、少しだけ思ってしまう。

 

釣りの前の腹ごしらえ

トレーラーのシンクでトマトを洗う

まだ我々が若かった頃は、日の出とともに出船し、カップラーメンやインスタントの昼ごはんを食べるとき以外は、日没まで湖の上にいるような時代もあった。それほど、この桧原湖の旅はカヤックに乗ってのバスフィッシングが中心だったし、今も一年に一度、この釣りに集中する時間であることは変わらない。

とはいえ、日中は気温も高く、正直あまり釣れない。それに、年齢を重ねるにつれて無理も利かなくなってきたので、最近は昼のあいだに陸へ上がり、のんびり過ごす時間も長くなってきた。

マルチグリドルパンで作るチーズピザ

ここ数年は、お気に入りの塩ラーメンの店に行ったり、レストランを開拓したりするのが昼の定番。しかし今年はトレーラーがある。珍しく自分たちで作って食べようという気にもなり、あらかじめ食材をいろいろ買ってきた。

今日のお昼は、YouTubeで見て気になっていた、マルチグリドルパンで作るお手軽なチーズピザ。ものの5分足らずで用意できたピザは、見た目こそ少し豪快だけど、チーズが溶けて、トマトの酸味も効いていて、なかなか悪くない。湖に出ている時間だけがこの旅の楽しみではないのだと、こういう昼食を囲んでいるとあらためて思う。

トレーラーの室内で食卓を囲む3人

寝るときにはキングサイズのベッドにもできるテーブルソファーセットは、男3人が食卓を囲んでも十分なゆとり。冷暖房も備わり、雨も避けられる室内は、夜になればそのまま酒盛りの会場になることだろう。

テントの中やタープの下で気温の変化とともに過ごす夜も、もちろん素敵な時間だと思う。けれど今は、手に入れたこの快適な外遊びの道具で、もう少し気楽に、もう少し長く自然のなかに身を置いてみたい。

緑豊かなキャンプサイトに停まるトレーラーと車

快適になることで、自然から遠ざかるわけではない。むしろ余計な我慢や手間が減るぶん、湖畔で過ごす時間や、仲間と囲む食卓を前より素直に楽しめる気がする。かつてこの場所で味わったトレーラーの快適さが、形を変えて自分たちの旅に戻ってきた。長年続けてきた桧原湖の旅に加わったその変化を、今年の私たちは楽しんでいる。

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