STORY
縁が広げた自然遊び
長野県の八ヶ岳西麓と東京での2拠点生活を始めたのは5年前で、徐々にこちらで過ごす時間が長くなり、今年の春には、ついに古民家をリノベした自宅が完成した。リビングからは八ヶ岳が望めて、毎朝10kmほど近所を走るのが僕のルーティン。東京から毎週末、自然のあるところまで通っていた日々を考えると、なんと贅沢な環境なのだろうと思う。
身近にある贅沢な自然へ
トレランを始めて、そして縁があってよく通うようになった白樺湖周辺は、移住する前からのお気に入りの場所。そして、いまや僕の遊びの拠点になっている。自宅から車で20分ちょっとという近さもあって、湖畔を走ったり、山に入ったりと、その日の気分に合わせて遊べるフィールド。最近は、ランに自転車やSUPを組み合わせて1日を過ごすのにハマっていて、時間を見つけては結構な頻度で出かけている。
ここでの遊びの幅を広げてくれたのが、白樺湖の湖畔で営業している八ヶ岳アドベンチャーツアーズの福井五大さんとの出会いだった。五大さんはスキークロスの元日本代表であり、全日本SUP選手権での優勝経験もあり、カヌー、サーフィン、MTB、釣りにトレランと、多くのアクティビティに造詣が深いアウトドアマン。何度か白樺湖で遊んでいるうちに、気にかけてくれるようになり、お店のギアを通じて様々な遊びを一緒にするようになった。
兵庫出身で、社会人になってから長らく東京で過ごしていた僕にとって、長野は見知らぬ土地だった。だけど、友人や妻の仕事をきっかけに茅野に縁ができて、遊びを通じて地元の人たちとつながりができたのは、ありがたいことだと思う。
白樺湖は周囲を山に囲まれながらも開放感があって、それでいて程よくコンパクト。湖畔から水の上へ出ることもできるし、霧ヶ峰や蓼科山まで足を延ばせば、遊びはさらに広がっていく。トレランを入り口に自然遊びを覚えた僕に、この山の中のオアシスは、別の景色を見せてくれる。
いつもの場所での
新たな挑戦
人に触れ、土地に触れて遊びの幅を広げるうちに出会った自転車。自分の脚だけでなく、クロスバイクで長距離を走る楽しさを知り、最近は未舗装路をグラベルバイクで駆け回る遊びも覚えた。ランより一段階早く、そして遠くへ連れて行ってくれる自転車に、また違う可能性を感じている。
そして今日は、八ヶ岳アドベンチャーツアーズでレンタルしているEバイクに初挑戦。前から気になっていたものの、普段は自転車もトレーニングの一環として乗ることが多く、今までは手が伸びなかった。でも、Eバイクならではの楽しさがあるというので、今日は思い切って借りてみたのだ。
標高約1400mの白樺湖から目指すのは、約1800mの車山肩駐車場。片道約10km、標高差約400mと、トレーニングにもぴったりのコースだけど、今回は電動アシストが頼もしい。上り坂でも平地を進むような感覚でこげるので、いつもより周囲の景色を楽しむ余裕がある。
ツーリングやドライブのメッカでもあるビーナスラインは、白樺湖から上がっていくにつれて、高原の眺めが大きく開けてくる。風に揺れるススキや、空へと続くようなワインディングロードを眺めながら、カーブの先へ、もうひとつ先へとペダルをこいでいく。いつもは尾根沿いを走るこの辺りも、道路から眺めると山の重なり方が変わって見えて、登っている時間までゆっくり楽しめた。
小一時間のサイクリングで車山肩を目指したのは、前からずっと気になっている「ころぼっくるひゅって」に寄りたかったからだ。湿原を一望できる山小屋兼カフェで、SNSでも話題になり、週末は長蛇の列になるが、平日に休みを取った今日なら、さくっと入れて、噂のボルシチが食べられるかもしれない。
……そう思ってやってきたけど、完全に考えが甘かった。並びを見た感じ、1時間以上は覚悟が必要そうだったので、やはり今回も見送り。まだ暖かな高原の日差しを浴びながら、ベンチでキンキンに冷えた八ヶ岳牛乳を飲み干し、次はランを始めることにした。
スタートとゴールは
どこだっていい
白樺湖周辺で走るときの定番パターンはいくつかあって、1周3.8kmの湖畔のコースを何周かする「白樺ぐるりん」は、比較的フラットなコース。しっかり走り込むときは、湖から車山へと山の稜線に沿って走り抜ける、眺めが最高な中央分水嶺トレイルを選んでいる。今日は自転車で上まで来たので、車山肩を起点に山頂へ登り、その先のトレイルを周遊するルートを取った。
トレランをするときは、登山客が多いところを避けながら走っているけど、今日は平日で登山客もまばら。ゴツゴツした車山の登山道を抜けて、中央分水嶺トレイルに合流し、見晴らしのよいパートを走ってみることにする。足元の石や段差に合わせて足を置く場所を選び、なだらかな道に出たら少し歩幅を広げる。道の起伏に合わせて走るリズムが変わっていくのも、トレランのおもしろいところだと思う。
白樺湖から少し標高を上げると、高い木々に遮られない高原が広がるので、ここは本当に走っていて気持ちがいい。森林限界ほど高い場所ではないけれど、かつては牛や馬の餌にするための採草地として使われ、草刈りや火入れをする人の手によって、この開けた風景が保たれてきたそうだ。風からも秋の気配が感じられる頃、ススキ野原の間を抜けながら、遠くの山並みまで見渡せる道を走るのは爽快そのもの。
仲間と走るときや1人で走るとき、時間のあるときとないときで、ルートを変えられるのもこのエリアのいいところ。湖から登ってくる日もあれば、今日のように高原まで自転車で来て、気に入った区間を走る日もある。走りたい距離や、一緒に楽しみたい遊びに合わせて道をつなげられるので、何度来ても飽きない。
湖上でもうひと遊び
走っていい汗をかき、再び自転車にまたがって湖まで。下り基調の道で風を受けたあとは、最後に水辺の遊びでクールダウンするのだ。といっても、SUPも意外と全身運動なので、これはこれで汗をかくんだけどね。
車のルーフに積んできたSUPは、五大さんがプロデュースするSUPブランド「PEAKS5」のもの。ツーリングにもレースにも使える「MANOA」というモデルで、最近、誕生日プレゼントに妻から買ってもらった。これまではレンタルで楽しんでいたけれど、お気に入りのマイSUPを手に入れてからは、ますます夢中になっている。
先日は五大さんのSUP教室を少し手伝う機会もあったけど、正直なところ僕の技量はまだまだ。足元が揺れるボードの上でバランスを取りながら漕ぐには、ランとはまた違う体の使い方が必要になるのだ。
それに、波や風の影響をじかに受けるので、自然のコンディションに左右されるのもSUPのおもしろいところ。思うように進めず、ときには風と戦っているような感覚にもなる。だからこそ、パドルと体幹を使って水をつかみ、行きたい方向にボードがスイスイ進むと気持ちがよくて、どんどん遠くへ漕ぎたくなる。
心拍が上がるほど漕いだあとは、思いっきり跳ね上がってドボン。そしてボードの上に寝転んでみる。水面の揺れに身を任せているだけでも気持ちがよくて、ライドとランを楽しんだあとに、こんな時間が持てるのも白樺湖のいいところだ。
湖上に出ると、いつも走っている岸辺の木々や建物を、水の上から眺められるのも楽しい。山から見下ろしていた湖に浮かび、今度はその山を見上げていると、見慣れたはずの白樺湖がずいぶん広く感じられて、その中を自由に行き来できることが、ふとうれしくなる。
トレランに、自転車にSUP。遊びに本気になれる環境がすぐ近くにあって、一緒に楽しむ仲間も増えている。この8年は「口角を上げて走るトレイルランナー」を自称して走り続けてきたけれど、このフィールドに通ううちに、走ることから枝分かれするように、興味の幅が広がってきた。
遊びを通じて知り合った人から、また別の遊びのおもしろさを教えてもらい、気になって試してみると、これがまた楽しい。今日のEバイクもそうだったけど、いつもの場所にいても、まだまだ知らない楽しみ方があるのだ。そんな発見を一緒におもしろがってくれる仲間もいて、やりたいことは増える一方。時間が足りないと思うほど、充実した毎日を過ごしている。
最近は、SUPレースにも初挑戦したいと思うようになった。まずは自分のボードをもう少し乗りこなせるようになって、そして、レースならではのおもしろさも味わってみたい。そう考えると、ますます僕の白樺湖通いが止まらなくなってしまいそうだ。
Instagram: @tsuku.nao